みなさん、刑事裁判で原告となるのは被害者ではなく検察官だということはご存知ですよね。検察官=別名検事。難関の司法試験を突破し、検察庁で働くエリートのお役人です。
先に言っちゃいますが、主に警察で取調べを受けた「被疑者」は検察に引き渡されて裁判にかけられるか判断されます。裁判にかけられると「被疑者」という呼び名が「被告人」にかわるんです。
裁判にかけられないと判断されたときは、みなさんもよく耳にすると思いますが「不起訴処分」と言われますよね。
今回、分かりやすいように、また万引事件を例にとりあげますがご了承を。長くなってしまいましたが、「刑事手続きが少しだけ分かる話」始まりまぁす。
〔もくじ〕
(1)万引したのに学校や会社に行ける在宅捜査
(2)万引してから後悔したら
(3)前科をつけない不起訴処分
(4)万引犯の処分が軽くなるケース
(5)前科はついても裁判したくないケース
(1)万引したのに学校や会社に行ける在宅捜査
通常は、万引現場を取り押さえられ、警察に身柄が引き渡され逮捕されます。または、監視カメラで足がついてしまい、自宅に警察がやってきて身柄を取り押さえられます。
いずれの場合も身柄を取り押さえられたあと釈放されて、釈放されたまま取調べが行われる場合があるんです。
それが「在宅捜査」。つまり、「被疑者」在宅のまま捜査が進められます。これは、他にワルさをしてないようで、万引額も比較的小さく、仕事先も住所もしっかりしていて、一緒に住んでる家族がいる場合です。まとめると…
・特に余罪がないこと
・被害額が小さいこと
・職業と住所が確定していること
・同居の家族がいること
です。ちなみに、いったん逮捕されても家族が「身元引受書」を提出して在宅捜査にしてもらえる可能性があります。
在宅捜査の一番のメリットは、学校や会社にも通えるし近所の人にも犯罪を知られることがないということでしょう。
在宅捜査でも最終的に起訴される可能性は否定できません。在宅捜査から起訴されれば有罪判決が出る可能性は濃厚です。なので、在宅捜査であっても、不起訴を獲得することが最重要となります。
(2)万引してから後悔したら
この場合は弁護士を立てて、万引がバレてない段階から相談しましょう。そして、相手の心情に考慮し、早期に被害弁償すれば事件化しないですむ可能性も高まります。
ほっといて、後で事件が発覚した場合、店側の怒りが増幅し示談が難しくなることも。下手すりゃ警察に突き出されて刑事手続きが進む可能性が無いわけではありません。
弁護士を通して被害者の気分を害しないようにし、スピーディーに示談に持っていくのがベストです。何もしないで後悔してる間に、万が一 事件が発覚した場合も即弁護士へ相談を。
(3)前科を付けない不起訴処分
不起訴処分にすれば、刑事裁判にならないので、判決もなく刑罰を言い渡されることもないので前科もつきません。不起訴処分にするには…
①弁護士をたてて、早い段階から被害者と示談交渉を進めましょう。
そして当然のことですが、②検察に引き渡され、起訴・不起訴の処分をするまでに被害弁償を終えて下さい。
最後に重要な「技」!③被害者が被疑者の罪を軽くしてくださいとお願いする「嘆願書」をなんとかして書いてもらうのです。これにより高確率で不起訴処分が決まります。
まとめると…
・早期の示談交渉をする
・起訴処分決定時までの被害弁償
・被害者に嘆願書を書いてもらう
これにより不起訴処分が決定すれば…
・刑事裁判にならないので刑罰が適用されない。(無罪)
・裁判に出ないから検察官にも責め立てられない。(怖い思いをしない)
・罰金すら払わなくてよいし、前科もつかない。(犯罪者ではない)
ということです。不起訴処分を狙うときも早期のアクションが大切です。それから被害者の「嘆願書」がカギを握ります。
(4)万引犯の処分が軽くなるケース
次は、どういう場合に万引犯の処分が軽くなるのか要件をみていきましょう。
①「オレ万引なんて初めてだよっ」っていうケース。
②300円のお菓子を万引してしまった。
③余罪で100円のガムも盗んでしまった。
④既に400円弁償済み。
⑤「もう二度とやりません」と反省し、誓っている。
⑥被害者が許している。
まとめると…
・初犯であること
・被害額が小さいこと
・余罪が少ないこと
・被害を弁償している。
・反省し二度としないと誓っている。
・被害者が許している。
数100円〜数1,000円の場合は被害者と示談すれば、そもそも起訴までもっていかれません。ただし数万円程度になると、必ずしも起訴されない可能性があるとは言い切れないのでご注意を。
(5)前科はついても裁判したくないケース
前科はついてもいい。でも裁判で検察に責められたくはない!裁判が嫌だ。という場合には「略式手続」というものがあります。みなさんも言葉は聞いたことがあるのでは。
「略式手続」とはすべての事件を裁判していたら膨大な費用と時間、被告人も毎回裁判に出なきゃいけないというデメリットを避けるため、被疑者に異議のない場合、正式な裁判によらないで、検察官の提出した書面上のみでする簡単な刑事裁判です。
この場合、①被疑者が「私がやりました」と言っていること、②その刑が「100万円以下の罰金≒科料」であること、③被疑者が裁判で争うことを望んでいない=略式を受け入れていることです。
※万引は50万円以下の罰金なので、上の条件にあてはまります。
※万引も繰り返していると10年以下の懲役になるのでそのような場合は略式手続きはできません。
まとめると…
・被疑者が罪を認めていること
・100万円以下の罰金≒科料の場合
・被疑者が略式手続きを認めていること
です。ここで、注意して欲しいのがデメリットとして必ず「前科」がついてしまうことです。特に無罪主張したい場合には絶対に略式手続きを選んではいけないということを忘れずに。
まとめ
以上のように簡単ではありますが、ケースごとに刑事手続きについてみてきました。みなさんの身に何かふりかかるということはないと思いますが、参考程度に読んで頂ければなと思って書きました。